特許査定率上昇中!欧州特許出願の基礎

欧州特許出願は、特許査定率が低いという印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、近年、欧州特許出願の特許出願の特許査定率が上昇しています。

この記事は次のような方に向けたものです。

  • 日本からの出願数や特許査定率など欧州特許出願に関する統計情報を知りたい
  • 欧州特許出願の基本的な特徴をおさらいしたい、又は知りたい

出願統計

次のグラフは、特許行政年次報告書2020年版からの抜粋です。欧州特許庁(EPO)への年間の特許出願数が示されています。さらに、それに占める日本からEPOへの特許出願数等が示されています。

このグラフによると、2019年は、EPOへの出願数はトータルで約18万件、そのうち、日本からEPOへの出願が約2.2万件です。

出典:特許行政年次報告書2020年版

欧州で特許を取得するために、EPOへの出願ではなく、特許を取得したい国の特許庁に直接出願することも可能です。日本から直接出願されることが多い国は、ドイツ、英国、及びフランスです。

次の表は、2019年のドイツ、英国、及びフランスの特許庁への特許出願数の統計です。「日本人」は日本からの出願数、「合計」は全体の出願数です。ドイツの特許庁への出願が英国及びフランスと比較して圧倒的に多くなっています。

ドイツ英国フランス
日本人7,956560278
合計67,43419,25015,869

出典:WIPO IP Statistics Data Center

審査期間

IP5 Statistics Report 2018によれば、EPOへの出願後、最初のオフィスアクション(調査報告)が発行されるまでの期間(FA期間)は、4.4か月、最終処分までの期間(最終決定期間)は、25.1か月です。一方、JPOでは、FA期間は9.3か月、最終決定期間は14.1か月です。EPOでは、調査報告が発行されるまでの期間は短いですが、最終処分までの期間が長い傾向にあります。

FA期間最終決定期間
EPO(2018年)4.4か月25.1か月
JPO(2018年)9.3か月14.1か月

特許査定率

次のグラフは、特許行政年次報告書2020年版からの抜粋です。2019年の特許査定率は、EPOは62.2%、JPOは75.3%です。EPOの特許査定率は、JPOと比較してかなり低くなっています。しかしながら、EPOの特許査定率は、47.6%だった2014年と比較すると、近年かなりのスピードで上昇傾向にあります。

欧州特許出願の特徴

日本との比較で欧州特許出願の特徴を以下に示します。

欧州日本
保護対象次のものそれ自体については、保護されない(EPC52条)
(a)発見、科学の理論及び数学的方法
(b)美的創造物
(c)精神的な行為、遊戯又は事業活動の遂行に関する計画、法則又は方法並びにコンピューター・プログラム
(d)情報の提示
上記「それ自体」に該当する(つまり、保護対象にならない)か否かはクレームに係る主題が技術的性質を有するか否かなどが考慮される(審査ガイドラインPart G Chapter II)
自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの(1条)
コンピュータプログラムは保護される(2条)
新規性喪失の例外出願人等以外による所定の行為、又は出願人等による所定の国際博覧会での展示の場合、6か月間の例外期間あり(EPC55条)1年間の例外期間あり(30条)
出願の言語英語、フランス語、ドイツ語(EPC14条(1))
他の言語で出願でき、その場合は、その後翻訳文を提出する(EPC14条(2))
日本語(施行規則2条)
外国語で出願でき、その場合は、その後翻訳文を提出する(外国語書面出願制度(36条の2))
マルチクレーム追加料金・制限なし追加料金・制限なし
出願維持年金出願日から起算して3年目から欧州特許の付与の告示が欧州特許公報に公告された年まで出願維持年金を納付する必要あり(EPC86条)なし
審査前の調査報告書関連する文献について言及する調査報告が作成される(EPC92条、EPC規則61条)なし
出願審査請求制度あり
欧州調査報告の公開から6か月以内、又は国際出願に基づく出願の場合における優先日から31か月以内のいずれか遅い方(EPC94条、EPC規則70条、EPC規則159条)
あり
出願から3年以内(48条の3)
審査促進制度あり
PACE(https://www.epo.org/law-practice/legal-texts/official-journal/2015/11/a93.html)など
あり
早期審査制度など
OA応答期限2か月以上4か月以下とし、一定の事情においては,最長6か月とすることができる(EPC規則132条)国内居住者:60日、在外者:3か月(方式審査便覧04.10)
OA応答期限の延長可能期間応答期限の合計が6か月を超えない限度で可能(EPC規則132条)国内居住者:2か月、在外者:3か月(方式審査便覧04.10)
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