日本から高い出願率!米国特許出願の基礎

日本から外国への特許出願の中で最も出願数が多いのが米国への出願です。この記事は、次のような方へ向けたものです。

  • 日本企業は米国へどの程度特許出願をしているのか気になる
  • 米国特許出願の基本的な特徴をおさらいしたい、又は知りたい
  • 米国特許の最近の状況を知りたい

出願統計

次のグラフは、特許行政年次報告書2020年版からの抜粋です。米国特許商標庁(USPTO)への年間の特許出願数が示されています。さらに、それに占める日本からUSPTOへの特許出願数等が示されています。

このグラフによると、2019年は、USPTOへの出願数はトータルで約62.2万件、日本からUSPTOへの出願が約8.6万件です。

出典:特許行政年次報告書2020年版

次のグラフは、日本特許庁(JPO)への特許出願数と、そのうち、日本企業(日本人)による特許出願数などが示されています。このグラフによれば、2019年の日本人によるJPOへの出願は約24.5万件です。

つまり、上記の2つのグラフによれば、日本企業によるJPOへの特許出願のうち、およそ1/3強(2019年の場合、ラフな計算で8.6万件/24.5万件)がUSPTOへも出願されているであろうことが把握できます。

この数字は高いでしょうか?

日本から外国への特許出願のうち、米国の次に出願数の多い国が中国ですが、2019年の日本から中国の国家知識産権局(SIPO)への特許出願数が4.9万件(日本企業によるJPOへの出願の約1/5)であることを踏まえると、日本企業による米国への出願はかなり多いことが分かります。

審査期間

IP5 Statistics Report 2018によれば、USPTOへの出願後、最初のオフィスアクション(拒絶理由通知)が発行されるまでの期間(FA期間)は、15.6か月、最終処分までの期間は、23.8か月です。一方、JPOでは、FA期間は9.3か月、最終決定期間は14.1か月です。

FA期間最終決定期間
USPTO(2018年)15.6か月23.8か月
JPO(2018年)9.3か月14.1か月

出典:IP5 Statistics Report 2018

特許査定率

次のグラフは、特許行政年次報告書2020年版からの抜粋です。2019年の特許査定率は、米国は74.5%、日本は75.3%です。日本と同様、米国の特許査定率は、他国に比べて高く、米国の特許査定率は近年、上昇傾向にあります。一方で、技術分野などに応じて特許査定率は異なりますので、米国の特許査定率がここまで高いということに実感がない企業もあるかもしれません。

出典:特許行政年次報告書2020年版

米国特許出願の特徴

日本との比較で米国特許出願の特徴を以下に示します。

米国日本
保護対象プロセス、機械、生産物(manufacture)、組成物(35 U.S.C. §101)。上記に該当する場合であっても、自然法則、自然現象、又は抽象的概に関するものは原則として保護されない(October 2019 Patent Eligibility Guidance Update)。
コンピュータプログラムは保護されない(MPEP §2106)。
自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの(1条)。
コンピュータプログラムは保護される。(2条)
仮出願あり(35 U.S.C. §111(b))あり(38条の2)
新規性喪失の例外1年間のグレースピリオドあり(U.S.C. §102(b)(1))1年間の例外期間あり(30条)
出願の言語英語(37 CFR §1.52 (b)(1)(ii))
英訳文が提出されることを要件に、他言語で出願可能(37 CFR §1.52 (d))
日本語(施行規則2条)
外国語書面出願制度(36条の2)
マルチクレームマルチクレームは追加料金要(37 CFR §1.16(j))
マルチマルチは禁止(37 CFR §1.75(c))
追加料金・制限なし
情報開示義務IDSあり(37 CFR §1.56(a))なし
出願公開出願(最先の優先日)から18か月後に公開(35 U.S.C. §122(b)(1)(A))出願から1年6か月経過後に公開(64条)
出願審査請求制度なし出願から3年以内(48条の3)
審査促進制度優先審査制度(Track One、37 CFR §1.102(e))などあり
PPH:USPTOとJPOの間であり
早期審査制度など
OA応答期限3か月(MPEP §710.02)国内居住者:60日、在外者:3か月(方式審査便覧04.10)
OA応答期限の延長可能期間3か月(37 CFR §1.134)国内居住者:2か月、在外者:3か月(方式審査便覧04.10)
補正の制限新規事項追加の禁止、final OAではさらに制限される(37 CFR §1.116)新規事項追加の禁止、最初の拒絶理由通知の応答ではさらにシフト補正の禁止、最後の拒絶理由通知の応答ではさらに制限(17条の2)
継続審査請求(RCE)final OA等が発行された後にRCEを請求することにより、最終性が解消され、審査が継続される(37 CFR 1.114)なし
バイパス出願米国を指定するPCT出願の一部継続出願等(バイパス出願)を行うことが可能(MPEP §1895)なし

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