欧州特許審査ガイドラインG-VI:新規性

はじめに

EPC54条は、新規性について次のとおり規定しています。

(1) 発明は、それが技術水準の一部を構成しない場合は、新規であると認められる。
(2) 欧州特許出願の出願日前に、書面若しくは口頭、使用又はその他のあらゆる方法によって公衆に利用可能になったすべてのものは技術水準を構成する。
(3) また、その出願の出願日が(2)にいう日の前であり、かつ、その日以後に公開された欧州特許出願の出願時の内容も技術水準を構成するものとみなされる。

例えば、出願日前に公開された文献から直接かつ明瞭に導き出される主題については、新規性がありません。この「直接かつ明瞭に」(directly and unambiguously)という表現は、補正要件の適否の判断でも使用されます。

EPC54条(3)は、日本の特許法29条の2の規定に似ていますが、EPC54条(3)には、日本の特許法29条の2のように同一出願人等に適用が除外される規定がない(つまり、同一出願人等でも拒絶される)ことに留意が必要です。

以下は、審査ガイドラインG-VIに記載されている説明の概要です。

EPC54条(2)に規定の技術水準

発明が技術水準を構成しない場合、その発明は新規であると認められる。

「欧州特許出願の出願日前に、書面若しくは口頭,使用又はその他のあらゆる方法によって公衆に利用可能になったすべてのもの」は、技術水準を構成する(EPC54条(2))。出願後に公開された先願である他の出願の出願時の内容も技術水準を構成する(EPC54条(3))。

黙示的な特徴又は公知の均等物

文献は、その文献から直接かつ明瞭に導き出される主題について、クレームに係る主題の新規性を喪失させる。

当該文献(から導き出せる主題)は、当該文献に明示された事項で当業者に示唆された特徴も含む。例えば、ゴムの弾力性を利用していることが明らかな場合のゴムの利用についての開示は、ゴムの弾力性の利用が明示されていなくても、弾性材料使用の新規性を喪失させる。

先行文献の基準日

新規性の判断において、先行技術文献は、その文献の関連する日付において当業者が読んだ(読んだであろう)ように読まれる。

「関連する」日付とは、公開文書の場合、公開日を意味し、EPC54条(3)の文書の場合、出願日(又は優先日)を意味する。

先行文献の実施可能な開示

文書に記載された情報が、その文書の関連する日付において当業者が当時の一般知識をも考慮して、その文書の主題である技術的教示を実施するのに十分である場合にのみ、文書に記載されたその主題は公に利用可能とみなされ、EPC54条(1)に従って技術水準に含まれるものとみなすことができます。

包括的開示及び特定の例示

新規性の検討にあたっては、包括的(generic)な開示は、通常、当該包括的な開示の具体例に該当するものの新規性を奪いませんが、特定の開示は、その開示を包含する包括的なクレームの新規性を奪うことを念頭に置く必要があります。

例えば、銅の開示は、一般的な概念としての金属の新規性を奪いますが、銅以外の金属の新規性を奪うことはありません。

黙示の開示及びパラメータ

新規性の欠如の判断に関して、先行技術文献の場合、その文献自体に明示的に記載されていることから明らかである場合があります。

また、先行技術文献の教示を実施すれば、当業者が必然的に請求項の条件に該当する結果に到達するという意味で、新規性の欠如が暗黙的である場合もあります。

関連する先行技術において、異なるパラメータが記載されている、又は全くパラメータが記載されていないことがあります。公知技術とクレームされた製品が他のすべての点で同一である場合(例えば、出発製品と製造工程が同一であればこのようなことが予想されます)、新規性の欠如のオブジェクションが生じます。

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