日欧米比較:クレームの機能的記載

具体的な構造等を記載することなく、特許出願のクレームの構成を機能的に表現することがあります。

例えば、クレームの範囲を広く設定すること、又は具体的な構造等で表現することが困難な対象を特定することなどを意図して、そのような表現が用いられます。

米国特許(出願)では、機能的に表現されたクレームとして、ミーンズプラスファンクション(mean-plus-function:MPF)クレームが知られています。

米国でMPFクレームは、クレームが通常より狭く解釈され、さらに、その他の留意点もあります。

欧州(EPO)の審査ガイドラインにもMPFクレームについての説明があります。MPFクレームが米国のような方法で狭く解釈されるという説明はありませんが、欧州でもMPFクレームには留意点があります。

本記事では、日欧米におけるクレームの機能的記載の取り扱いについて解説します。

日欧米比較:クレームの機能的記載

米国

MPFクレームに関して、米国特許法第112条(f)には、次のように記載されています。

35 U.S. Code § 112 – Specification

(f)Element in Claim for a Combination.
An element in a claim for a combination may be expressed as a means or step for performing a specified function without the recital of structure, material, or acts in support thereof, and such claim shall be construed to cover the corresponding structure, material, or acts described in the specification and equivalents thereof.

<参考和訳>

第112条 明細書
・・・
(f) 組合せに係るクレームの要素
組合せに係るクレームの要素は、その構造、材料又はそれを支える作用を詳述することなく、特定の機能を遂行するための手段又は工程として記載することができ、当該クレームは、明細書に記載された対応する構造、材料又は作用及びそれらの均等物を対象としているものと解釈される。

つまり、MPFの形式で記載されていることにより第112条(f)が適用されたクレームは、明細書に記載された対応する構造、材料又は作用及びそれらの均等物を対象としているものと解釈されます。

Manual of Patent Examining Procedure (MPEP) 2181には、次のトピックを含む、MPFクレームの審査の具体的なガイダンスが記載されています。

  • クレームの限定に対して第112条(f)が適用されるか否かの判断
  • 第112条(f)に関する明確な記録
  • 第112条(a)及び(b)に基づき、クレームの限定を裏付けるのに必要な記載の評価

それぞれについて以下に説明します。

1.クレームの限定に対して第112条(f)が適用されるか否かの判断

当該判断は、3プロング分析(3-prong analysis)により行われます。具体的には、クレームの限定が次の3プロングを満たす場合、第112条(f)が適用されます

  • (A) クレームの限定が、「meaans」若しくは「step」という用語を使用している、又は「means」の代替として使用される用語であってクレームされた機能を実行するための一般的なプレースホルダ(ノンスターム(※nonce term:意味を持たない用語)若しくは特定の構造的意味を持たない非構造的用語とも呼ばれる)である用語を使用している、
  • (B) 「means」若しくは「step」という用語、又は一般的なプレースホルダーが、機能的言語によって修飾され、常にではないが通常、移行語「for」(例えば、「means for」)、又は「configured to」若しくは「so that」などの別の連結語句によって連結される、かつ
  • (C) 「means」若しくは「step」という用語、又は一般的なプレースホルダーが、クレームされた機能を実行するための十分な構造、材料、又は行為によって修飾されていない

上記の3プロング分析によれば、例えば、「means」が使用されていても、機能を実行するための構造を十分に含んでいるクレームの限定に対しては、第112条(f)は適用されません

一方、「means」が使用されていなくても、それに代わるプレースホルダー(例えば、「unit」)が使用されており、機能を実行するための構造等を十分に記載していないクレームの限定に対しては、第112条(f)が適用される可能性があります

MPEP 2181には、「means」若しくは「step」の代替として機能する一般的なプレースホルダーとして、「mechanism for」、「module for」、「device for」、「unit for」、「component for」、「element for」、「member for」、「apparatus for」、「machine for」、「system for」が例示されています。

一般的なプレースホルダーとして、第112条(f)が必ず適用されるもののリストは存在しません。

2.第112条(f)に関する明確な記録

MPEP 2181によれば、審査中にクレームの解釈に関して第112条(f)が適用されると判断された場合、審査官は、第112条(f)が適用されてクレーム解釈されることをオフィスアクションに明示的に記載すべきであるとされています。

これにより、出願人は、第112条(f)が適用されたことを知ることができ、反論又は補正など必要な対応をとることができます。

3.第112条(a)及び(b)に基づき、クレームの限定を裏付けるのに必要な記載の評価

クレームの限定に対して第112条(f)が適用された場合、裏付けとなる明細書の開示の適格性が第112条(a)及び(b)に基づいて評価されます。当該評価により、クレームの範囲の境界が明確に定義されているか、適切に記載された明細書が提供されているか、クレームが実行可能であるかが判断されます。

また、コンピュータ実装発明の場合、第112条(f)が適用された場合、クレームに記載の機能に関して、コンピュータの機能を実行するためのアルゴリズムが明細書に開示されている必要があります。

当該アルゴリズムは、数式又はフローチャートなどで示すことができます。

以上のとおり、クレームの限定に対して第112条(f)が適用された場合、クレームが通常より狭く解釈されるだけでなく、明細書の記載に関して、第112条(a)及び(b)に基づいて拒絶される可能性があることに留意が必要です

<参考情報>

USPTOより2024年3月18日付でMPFクレームの審査に関するメモランダムが発行されています。このメモランダムには、MPEPに記載のMPFクレームの審査における重要な点がコンパクトにまとめられています。

日本

日本の審査基準には、米国のミーンズプラスファンクションクレーム又はこれに直接対応するようなクレーム記載方法についての規定はありません。

一方で、機能的にクレーム要素を特定することについて、審査基準第III部第2章第4節には、次のような記載があります。

2. 作用、機能、性質又は特性を用いて物を特定しようとする記載がある場合
2.1 請求項に係る発明の認定
請求項中に作用、機能、性質又は特性(以下この項(2.)において「機能、特性等」という。)を用いて物を特定しようとする記載がある場合は、審査官は、原則として、その記載を、そのような機能、特性等を有する全ての物を意味していると解釈する。例えば、「熱を遮断する層を備えた壁材」について、審査官は「断熱という作用又は機能を有する層」という「物」を備えた壁材と認定する(注)。ただし、審査官は、機能、特性等を用いて物を特定しようとする記載の意味内容が明細書又は図面において定義又は説明されており、その定義又は説明により、機能、特性等を用いて物を特定しようとする記載が通常の意味内容とは異なる意味内容と認定されるべき場合があることに留意する。
・・・
(注) 出願時の技術常識を考慮すると、そのような機能を有する全ての物を意味しているとは解釈されない場合がある。具体的には、請求項に「木製の第一部材と合成樹脂製の第二部材を固定する手段」が記載されている場合が挙げられる。文言上は排除されていないが、出願時の技術常識を考慮すると、この手段に、溶接等のような金属に使用される固定手段が含まれないことは、明らかである。

つまり、クレーム中の物を機能を用いて特定しようとする記載がある場合、その記載は、原則として、そのような機能を有するすべての物を意味していると解釈されます。

従って、MPFクレームのような表現であっても、クレームが示す範囲は、米国のような方法により限定して解釈されません。

また、新規性又は進歩性の判断に関して、審査基準第III部第2章第4節には、次のような記載もあります。

2.2.2 機能、特性等の記載により引用発明との対比が困難であり、厳密な対比をすることができない場合
この場合は、請求項に係る発明の新規性又は進歩性が否定されるとの一応の合理的な疑いを抱いたときに限り、審査官は、新規性又は進歩性が否定される旨の拒絶理由通知をする。ただし、その合理的な疑いについて、拒絶理由通知の中で説明しなければならない。

つまり、機能的に記載されたクレームの構成と、引用発明との間の差異の特定が困難である場合、新規性又は進歩性の拒絶理由が通知されます。

このようなケースでは、多くの場合、クレームの構成を具体的な構造等を特定するなどして引用発明との差異を明確にすることにより、拒絶理由が解消されます。

また、参考として、コンピュータ関連発明の発明該当性の判断に関して、審査基準第III部第1章には、次のような記載があります(下線は強調のため追記)。

2.2 コンピュータソフトウエアを利用するものの審査に当たっての留意事項
(1) コンピュータソフトウエア(注)を利用するものであっても、以下の(i)又は(ii)のように、全体として自然法則を利用しており、「自然法則を利用した技術的思想の創作」と認められるものは、コンピュータソフトウエアという観点から検討されるまでもなく、「発明」に該当する。
(i) 機器等(例:炊飯器、洗濯機、エンジン、ハードディスク装置、化学反応装置、核酸増幅装置)に対する制御又は制御に伴う処理を具体的に行うもの
(ii) 対象の物理的性質、化学的性質、生物学的性質、電気的性質等の技術的性質(例:エンジン回転数、圧延温度、生体の遺伝子配列と形質発現との関係、物質同士の物理的又は化学的な結合関係)に基づく情報処理を具体的に行うもの
・・・
(2) 上記(i)又は(ii)と判断されないような、ビジネスを行う方法、ゲームを行う方法又は数式を演算する方法に関連するものであっても、ビジネス用コンピュータソフトウエア、ゲーム用コンピュータソフトウエア又は数式演算用コンピュータソフトウエアというように、全体としてみると、コンピュータソフトウエアを利用するものとして創作されたものは、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当する可能性がある。そのようなものについては、審査官は、ビジネスを行う方法等といった形式にとらわれることなく、コンピュータソフトウエアを利用するものという観点から「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するか否かを検討する。すなわち、コンピュータソフトウエアを利用するものは、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源(注)を用いて具体的に実現されている」場合は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するため、この観点から検討する。

つまり、ソフトウェア関連発明では、クレームの構成が抽象的な機能で表現されていることにより、それを実現するための具体的な処理がクレームに記載されていないと判断された場合、発明該当性の拒絶理由が指摘されます。

欧州

欧州の審査ガイドラインには、次のとおり複数の節に分散して、クレームの機能的記載に関する規定が記載されています。

まず、審査ガイドラインF-IV, 2.1(参考和訳はこちら)には、次のような記載があります。

2.1 Technical features 

It is not necessary that every feature is expressed in terms of a structural limitation. Functional features may be included provided that a skilled person would have no difficulty in providing some means of performing this function without exercising inventive skill (see F‑IV, 6.5). …

<参考和訳>

2.1 技術的特徴
・・・
全ての特徴が構造上の限定として表現される必要はない。機能的な特徴は、当業者であれば、発明的技能を行使することなくこの機能を果たす何らかの手段を提供することが困難でない場合に限り、含めることができる(F-Ⅳ、6.5 参照)。・・・

つまり、クレームに係る特徴は、必ずしも構造により表現される必要はなく、機能的に表現することが認められています

審査ガイドラインF-IV, 4.10(参考和訳はこちら)には、次のような記載があります。

4.10 Result to be achieved 
The area defined by the claims must be as precise as the invention allows. As a general rule, claims which attempt to define the invention by a result to be achieved are not allowed, in particular if they only amount to claiming the underlying technical problem. However, they may be allowed if the invention either can only be defined in such terms or cannot otherwise be defined more precisely without unduly restricting the scope of the claims and if the result is one which can be directly and positively verified by tests or procedures adequately specified in the description or known to the person skilled in the art and which do not require undue experimentation (see T 68/85). …

<参考和訳>

4.10 達成すべき結果
クレームによって定義される範囲は、発明が許す限り正確でなければならない。原則として、達成される結果によって発明を定義しようとするクレームは、特に、根本的な技術的課題を主張することにしかならない場合には認められない。ただし、発明がそのような用語でしか定義できないか、又はクレームを不当に制限することなく他の方法でより正確に定義することができない場合であって、その結果が、明細書に適切に規定されているか、当業者に公知であり、過度の実験を必要としない試験又は手続によって直接かつ確実に検証できるものである場合には、認められることがある(T 68/85参照)。・・・

つまり、クレームに係る特徴を機能的に表現されることが認めらる一方で、達成される結果によって発明を定義しようとするクレーム、特に、発明が解決する技術的課題を主張することにしかならないような表現のクレームは、原則として、認められません

次に、ミーンズプラスファンクションで表現されたクレームに関して、審査ガイドラインF-IV, 4.13.2(参考和訳はこちら)には、次のような記載があります。

4.13.2 Interpretation of means-plus-function features (“means for … “) 
Means-plus-function features (“means for …”) are a type of functional feature and hence do not contravene the requirements of Art. 84.
Any prior art feature suitable for carrying out the function of a means-plus-function feature will anticipate the latter. For example, the feature “means for opening a door” is anticipated by both the door key and a crowbar.
An exception to this general principle of interpretation is where the function of the means-plus-function feature is carried out by a computer or similar apparatus. In this case the means-plus-function features are interpreted as means adapted to carry out the relevant steps/functions, rather than merely means suitable for carrying them out.

<参考和訳>

4.13.2 ミーンズプラスファンクションの特徴(「means for …」)の解釈
ミーンズプラスファンクションの特徴(「means for …」)は機能的特徴の一種であるため、第 84 条の要件に違反しない。
ミーンズプラスファンクションの特徴を実行するのに適した先行技術の特徴は、当該特徴を予見する。例えば、「ドアを開けるための手段」という特徴は、ドアキーとバールの双方によって予見される。
この一般的な解釈原則の例外は、ミーンズプラスファンクションの特徴がコンピュータ又は類似の装置によって実行される場合である。この場合、ミーンズプラスファンクションの特徴は、単にステップ/機能を実行するのに適した手段ではなく、関連するステップ/機能を実行するのに適合した手段として解釈される。
・・・

つまり、ミーンズプラスファンクションのクレーム記載形式それ自体は、明確性の要件(EPC第84条)に違反しません。また、米国のように範囲が狭く解釈されるという規定もありません

一方、解釈に関して、特徴を機能的に記載するミーンズプラスファンクションクレームに係る発明は、原則として、具体的な構造等に関係なく、当該機能を実行するのに適した先行技術を開示する文献によって、新規性が否定されます

このような原則の例外として、ミーンズプラスファンクションの特徴がコンピュータ等で実現される場合、先行技術文献が、コンピュータ等がクレームに係る特徴を実現するようにプログラムされていることを開示している場合にのみ、当該先行技術文献は、当該クレームに係る発明の新規性を否定します。

さらに、クレームを機能的な表現で過度に広範に記載した場合について、審査ガイドラインF-IV, 4.22(参考和訳はこちら)には、次のような記載があります。

4.22 Broad claims 
The Convention does not explicitly mention overly broad claims. However, objections to such claims may arise for various reasons.
Where there are discrepancies between the claims and the description, the claims are not sufficiently supported by the description (Art. 84) and also, in most cases, the invention is not sufficiently disclosed (Art. 83) (see T 409/91F‑IV, 6.1 and F‑IV, 6.4).
Sometimes an objection of lack of novelty arises, for example if the claim is formulated in such broad terms that it also covers known subject-matter from other technical fields. Broad claims may also cover embodiments for which a purported effect has not been achieved. On raising an objection of lack of inventive step in such cases, see G‑VII, 5.2.

<参考和訳>

4.22 広いクレーム
条約は過度に広範なクレームについて明確に言及していない。しかし、このようなクレームに対する拒絶は、様々な理由から生じる可能性がある。
クレームと明細書との間に齟齬がある場合、クレームは明細書によって十分に裏付けられておらず(84条)、また、ほとんどの場合、発明は十分に開示されていない(83条)(T 409/91、F-Ⅳ、6.1及びF-Ⅳ、6.4参照)。
例えば、クレームが広範な用語で記載され、他の技術分野の公知事項もカバーしている場合、新規性欠如の拒絶が生じることがある。広いクレームは、目的とする効果が達成されていない実施形態をカバーすることもある。このような場合の進歩性欠如の拒絶の提起については、G-VII, 5.2を参照のこと。
・・・

つまり、クレームを機能的な表現で過度に広範に記載したことにより、クレームと明細書との間に祖語が生じているような場合、EPC第83条又は84条に基づいて拒絶されます

クレームの範囲が広すぎ、明細書に記載された技術の分野を超えた分野の公知事項をクレームがカバーしている場合、新規性欠如(EPC第54条)により拒絶されることがあります。

また、審査ガイドラインF-IV, 6.5(参考和訳はこちら)には、次のように記載されています。

6.5 Definition in terms of function 
A claim may broadly define a feature in terms of its function, i.e. as a functional feature, even where only one example of the feature has been given in the description, if the skilled person would appreciate that other means could be used for the same function (see also F‑IV, 2.1 and 4.10). For example, “terminal position detecting means” in a claim might be supported by a single example comprising a limit switch, it being evident to the skilled person that e.g. a photoelectric cell or a strain gauge could be used instead. In general, however, if the entire contents of the application are such as to convey the impression that a function is to be carried out in a particular way, with no intimation that alternative means are envisaged, and a claim is formulated in such a way as to embrace other means, or all means, of performing the function, then objection arises. Furthermore, it may not be sufficient if the description merely states in vague terms that other means may be adopted, if it is not reasonably clear what they might be or how they might be used.

<参考和訳>

6.5 機能の観点からの定義
クレームは、明細書の中で特徴の一つの例のみが示されている場合でも、当業者が同じ機能に対して他の手段も使用できることを理解する場合には、その機能の観点で、すなわち機能的特徴として特徴を広く定義することができる(F-Ⅳ、2.1及び4.10も参照)。例えば、クレーム中の「端子位置検出手段」は、リミットスイッチを含む一つの例によって裏付けられているかもしれないが、それは例えば光電セルやひずみゲージを代わりに使用できることが当業者には明らかである。しかし、一般に、出願の内容全体が、ある機能が特定の方法で実行されるという印象を与えるようなものであり、代替手段が想定されているという示唆がなく、クレームが、その機能を実行する他の手段又は全ての手段を包含するような形で定式化されている場合には、拒絶が生じる。さらに、他の手段がどのようなものであるか、どのように使用され得るかが合理的に明らかでない場合、他の手段を採用し得ることを曖昧な用語で記載するだけでは十分でないこともある。

つまり、クレームのある特徴が機能的に記載されており、当該特徴の具体的な構造の例が明細書に一つのみ示されている場合でも、当業者が同じ機能に対して他の手段も使用できることを理解する場合には、機能的特徴として特徴を広く定義することができます

一方で、出願の内容全体が、クレームに機能的に記載された特徴がある特定の手段で実行されるという印象を与え、かつ、他の手段が想定される示唆がない場合であって、クレームが上記特定の手段と、上記他の手段とを包含するような表現で記載されている場合、拒絶されます。

欧州の規定のまとめとして、まず、原則として、クレームを機能的に記載することは認められます。一方で、発明が達成する結果を主張するに過ぎないような表現、又は明細書等の記載から想定されない手段を包含する表現など、過度に広範に記載された機能的表現は、拒絶されます

なお、クレームの構成を機能的に記載していることに関連して、当該構成を実現するための具体的な構造等が明細書に記載されていないとして、実施可能要件違反(EPC第83条)の拒絶理由が指摘されることがあります。実際に具体的な構造等が明細書に記載されていない場合、当該拒絶理由の解消が困難になる場合があります。

そのため、クレームを機能的に記載する場合であっても、クレームに係る特徴を実現するための具体的な構造等を明細書に記載しておくことが必要です

まとめ

上記のとおり、日欧米のいずれにおいても、特許出願のクレームの構成を機能的に表現することが可能です。

ただし、米国では、MPFの形式で記載されていることにより第112条(f)が適用されたクレームは、狭く解釈されます。

日欧では、MPFの形式で記載されたクレームであっても、米国のように解釈されません。

一般に、機能的にクレームを記載した場合、具体的に構造等を記載した場合と比較してカバーされる範囲が広くなるため、日欧米のいずれにおいても、明細書の記載に対してクレームがカバーする範囲が広すぎる場合は記載要件違反のリスクが生じます。

また、機能的にクレームを記載した場合、具体的に構造等を記載した場合と比較してカバーされる範囲が広くなるということは、機能的に記載されたクレームは、先行技術により新規性欠如となるリスクが高くなることを意味します。

そのため、クレームの構成を機能的に表現していることに起因して、拒絶理由が指摘される(又は取り消し若しくは無効が請求される)場合があります。そのような場合に、クレームの当該構成を実現するための具体的な構造等が明細書に記載されていないと、対応が困難になります。

従って、日欧米のいずれにおいても、クレームの構成を機能的に表現するとしても、クレームの当該構成を実現するための具体的な構造等を明細書に記載しておくことは重要です。

つまり、クレームの構成を機能的に表現することが可能であるということは、クレームの当該構成を実現するための具体的な構造等を明細書に記載しなくてよいということには必ずしもつながりません

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